父が亡くなって一年半になる。そろそろ日本に行く日が近づいて来て、ふとあの頃のことを思い出した。シャスタから帰ったその夜に「余命あと3日」という連絡をもらって急遽日本へ。父はなんとか頑張ってくれて病院で一週間付き添った後に静かに息を引き取った。一人暮らしだった父の遺骨をひっそりとしたアパートで初七日を迎えるまで一人で見守っていた。ろうそくを絶やさないように。亡くなった人の魂が迷わないように。そんなに深い悲しみではなく、年老いて死んでいくことの刹那さを感じていた。余りにも潔い父の死に様にある種の深い感動と尊敬を抱いていた。
東京で一人暮らしの老人の住むアパートの一室は日当たりがよくて簡素で案外心地よかった。ここで日々おだやかにひっそりと暮らしていた父の淡々とした日常が優しく映し出されるようだった。
パソコンを持って行っていたので、父の死後、近況をちょこっとブログに書いた。
そのブログを読んで二人の物を書く友人が連絡をくれた。
長屋和哉さんと
佐伯紅緒ちゃん。ふたりとも「一緒にご飯でも食べましょう」とさりげなく誘ってくれた。淡々と書いたつもりだけど、作家の佐伯紅緒ちゃんは「文章の間からみさおさんの悲鳴が聞こえてきた」と言ってくれた。ああ、アタシ、案外悲しみを抱えていたのかも・・・、とその言葉を聴いて自分の心を噛み締めた。ちょうど「すべての美しい闇のために」というエッセイ本が出版されたばかりの長屋さんに会いに八ヶ岳まで行き、新しい本を執筆中の紅緒ちゃんと恵比寿の美味しいタイレストランでご飯を一緒に食べ、物を書く人の優しくてそれでいてあくまでもさりげない深い思いに触れさせてもらった。
行間を読む。それって最大の愛の美学だと思う。
ユニティ・フェアではその長屋和哉さんも出演されて、久々にあの深遠な美しき闇の世界を味わえる。それから更に、紅緒ちゃんが私の出演の時に友情出演してくれることになりました。
シャスタの繋げてくれるものの大きさに触れる感動を味わっています。